歯科医師による新型コロナワクチン接種について
投稿日:2021年5月28日
カテゴリ:副院長ブログ
私自身は今週初めに、医療従事者用の1回目のワクチン接種を終えたばかりですが、ようやく都市部の大規模接種会場も機動しはじめ、集団免疫獲得によるパンデミック終息も近いと希望が持てるようになりました。
とはいえ、ワクチン接種のスピード感はまだまだ低速。この度、歯科医師も特例でワクチン接種に協力できることになったので、私でよければ手を挙げたい、と思い、接種者のための研修とそれに伴うテストを受け、日本歯科医師会から修了証を頂きました。
私も院長もロータリークラブという奉仕寄付団体にもう15年ほど所属しているのですが、ロータリーの考えに「職業奉仕」というのがあります。
ロータリーは元々は職業人の集まりであり、自分の仕事を真っ当に行うことで世の中に貢献しよう、という集まりなのですが、自分の歯科医師という職業を通して、今の社会のニーズ、「ワクチン接種の施術者の不足を補う」、ということの一助になれるのであれば一ロータリアンとしてもしっかり役目を果たしたいと思います。
まず、新型コロナワクチンには2種類あります。
一つはmRNAワクチン、もう一つはウイルスベクターワクチンです。一番最初に認可されたファイザー社のワクチンはmRNAワクチンであり、最近認可されたモデルナ社もmRNAワクチン、対してアストラゼネカ社のものはウイルスベクターワクチンです。
パンデミック発生からわずか1年で効果の高いワクチン(インフルエンザワクチンの発症予防率が約50%であることに対し、mRNAワクチンは90%以上、ウイルスベクターワクチンは70%以上の発症予防率!)ができたことは、専門家の中でも驚きのことだったようですが、それくらい一気に欧米では新型コロナウイルスが蔓延したため十分な治験が行えた、ということなのかもしれません。
ウイルスは体内に侵入すると自分の遺伝子(mRNA)を放出し、ヒト細胞は誤作動によりそれをコピーすることでウイルスを増殖させてしまい、結果、ヒト細胞は破壊され、それが組織の破壊(新型コロナでは喉や肺の組織を破壊するので肺炎が主症状になる)につながっていくわけですが、そもそも、ウイルスはスパイクと言われる殻の外側のトゲをヒト細胞の細胞膜に刺すことで侵入をしてきます。
なので、このトゲを認識する抗体さえ体内にあれば、ウイルスの侵入は防げるわけです。米国や英国はウイルスのこの「トゲを作る」という使命を持ったmRNAだけを作ることに成功しました。このmRNAはトゲを作る事しかできないので、病原性はありません。このトゲを作るmRNAのワクチンは、体内に入ると、ヒト細胞のリボソームに、「トゲを作れ」、という遺伝子情報を伝えるので、ヒト細胞はトゲ(スパイク)のみを作り始めます。
すると、体の免疫反応がこのトゲを異物と感知して、トゲに対する抗体をつくるわけです。一度、この抗体ができると、本物のウイルスが体内に入ってきても、トゲにしっかり対応するため、ウイルスはヒト細胞内に侵入できず、ウイルスの増殖が抑えられる、というわけです。
ファイザー社やモデルナ社のmRNAワクチンは、トゲを作るmRNAをヒトの細胞膜に似ている脂質膜で包んで体内に届けます。ただ構造がとても繊細なので、マイナス70度での保管など、扱いが難しいのが難点です。
対してアストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンは、人体に無害なチンパンジーアデノウイルスというウイルス(これが運び屋=ベクターとなる)に、トゲをつくるmRNAを挟み込んで体内に届けます。ただし、ウイルスベクターの場合、チンパンジーアデノウイルス自体に抗体を作ってしまうことも予想され、そうなると、体内にトゲを作るmRNAを届けることができないのでワクチンの効果は期待できません。そのかわりに、扱いは容易で冷蔵庫での保存も可能です。後遺症にも違いがあるようですが、今後の情報を正しく見守る必要があるでしょう。
ワクチン接種を受けることと、受けないことのベネフィットは人によって違います。体質や体調はもちろん、考え方も人それぞれです。ご自分が打てる順番が来るまでに熟考していただき、または、かかりつけ医に相談していただき、しっかりと理解したうえで決めていただければよいかと思います。
(うけがわ歯科川口駅前医院 副院長)
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