ボツリヌス療法
投稿日:2023年2月15日
カテゴリ:副院長ブログ
患者様のお悩みのうち、対処が難しいものの一つに、睡眠中の歯ぎしりや食いしばりがあります。歯ぎしり・食いしばりの原因はストレスと言われていますが、これは睡眠中に上下の歯を噛み合わせる事で、脳の血流を上げてストレスを解消しようとする無意識の行動なのです。
歯ぎしり・食いしばりにより、心因的なストレスは解消されたとしても、実際に大きな咬合力(300kg近い力がかかることも!)がかかる、歯や歯ぐき、歯を支えている歯槽骨などの歯周組織のダメージは大変なものです。
歯の磨耗や破折、動揺、歯槽骨隆起、また咬合筋痛、頭痛、顎関節の異音や疼痛など、症状は多岐に渡ります。しかし、厄介なのが、先述のように、歯ぎしり・食いしばりは睡眠中の無意識下での行動という事。自分ではコントロールできない行動なのです。
一般的には睡眠中に保険適用のナイトガードを入れていただき歯周組織を守るという治療を行いますが、ナイトガードの違和感により熟睡できないという方や、咬筋の張りによる輪郭の変形を気にされる方もいらっしゃるため、完璧な治療法とは言えないのが現状です。
そこで、当院ではこの度、ボツリヌストキシンによる咬筋の筋力コントロール療法を始めました。
ボツリヌストキシンとは、ボツリヌス菌が作り出すタンパク質の事で、筋肉に注射する事で、筋肉の過活動や緊張の改善、疼痛を和らげる事ができます。
ボトックスといえば聞いたことがある方も多いかと思いますが、ボトックスはアメリカ製品の商品名であり、当院では韓国製のボツラックスという薬剤を使います。
ボツラックスもボトックス同様、厚生労働省の認可を受けており、安全性と信頼性のある薬剤です。
注射の前に、現在の咬筋の力がどのくらいあるのかを筋電計で測ります。
ボツリヌス療法では、歯ぎしり・食いしばりを引き起こす咬筋に注射をします。皮膚の上から、3~5点注射し、ボツリヌストキシンを作用させます。
筋肉注射ですので、痛みはほとんどありません。またダウンタイムもありませんが、当日の長時間の入浴やサウナ、激しく運動、過度な飲酒はお控えいただきます。
おおよそ、数日後〜数週後に効果が出始め、歯ぎしりなどの症状は3〜4か月で徐々に改善されます。また筋電計にて、注射前より筋力が落ちているかの確認も行います。
効果の持続は5か月〜1年くらいと個人差がありますが、注射を続ける事で効果は持続しやすくなります。ボツリヌス療法は、ボツリヌストキシンにより、歯ぎしり・食いしばりを起こす根本である咬筋を弛緩させるため、噛む力が弱まり、歯や歯周組織が守られ、顎関節付近の筋痛や頭痛も緩和されます。
また、副効果として、咬筋の張りがなくなるので、小顔効果もあります。歯ぎしり・食いしばりにお悩みの方は、ぜひご相談くださいませ。保険治療対象外となります。
うけがわ歯科川口駅前医院 副院長
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